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偽文士日碌

七月九日(日):1053-1054

 わが作品の載っている新刊本が次つぎと送られてくる。講談社文庫
「創作の極意と掟」がどかっと送られてきた。これは今、売れてほし
い本の最たるものである。単行本がまだそこそこ売れ続けているので
少し惜しい気もするのだが。
 池澤夏樹の個人編集による日本文学全集の「近現代作家篇Ⅲ」が送
られてきた。おれの「魚籃観音記」が載っていて、まさにいいタイミ
ングで出たものだと思う。これを選んでくれた池澤君に感謝、感謝で
ある。なぜいいタイミングなのかは、最近のわが周辺に詳しい人なら
おわかりになるであろう。
「文學界」の今月号を見て驚く。次号予告としてわが「漸然山脈」だ
けがでかでかと広告されているのだ。たった三十枚の短篇なのに。他
の作家たちが怒らないかと心配である。
 文春文庫から出る「繁栄の昭和」の解説が届いた。お願いした通り
松浦寿輝が思う存分書いてくれている。こんな凄い解説を書いてもら
える作家は現代に於いては実に幸運であり幸福であると言えよう。
 角川書店からも「農協月へ行く」と「幻想の未来」が新たに文庫で
出る。そもそもがこの歳でこんなに本が出て、こんなに優遇されてい
るのが不思議だ。
「群像」の嶋田哲也から九月号用にと頼まれていたリレー・エッセイ
「私と大江健三郎」を書き始める。
ページ番号: 1053 1054

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