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偽文士日碌

八月二十八日(月):1063-1064

「今日はあまり我を張らないで」と光子に言われていたし、テレビの
占いで九月生まれが「我を張らぬよう」となっていたので、おとなし
くするつもりでお迎えの車に乗る。谷崎賞選考会なのである。読売本
社の会場に着くと全員お揃い。川上弘美はすでにおれの歌をYouT
ubeで聞いていた。選考は、途中で池澤夏樹が自分の推す作品の番
になって「これから大演説をやります」と宣言したから、これは十分
ぐらいかかるかと覚悟したのだが、たいしたことはなかった。大演説
はもう一回、終る前に社長からもあった。おれは松浦寿輝「名誉と恍
惚」を推したのだが、突っ張ることなく「この作品をミーハー的に好
きなので、まともな評価ができるかどうかわからない。皆さんの意見
に従う」とおとなしくしていたのだが、結果、接戦で松浦さんに決定
し、ほっとした。松浦さんに電話連絡したら「名誉と恍惚の極み」と
言って喜んでいたらしい。贈賞式のスピーチを乞われたが、水曜日と
あってビーバップの収録と重なる恐れがあるため、堀江敏幸にお願い
する。
 ビル最上階の銀座スエヒロに移動。例によって至福の歓談となる。
「老婆は一日にしてならず」など昔のギャグで盛り上がったりする。
帰りのエレベーターで降下中、桐野夏生がスマホを出して隅の椅子に
掛けているおれとのツーショットを自撮りで撮ってしまった。帰宅九
時過ぎ。
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