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偽文士日碌

七月十九日(金):1217-1218

 京都アニメの放火事件のニュースは、他人事と思えぬ胸の痛みがあ
った。「涼宮ハルヒの憂鬱」を作った会社であり、これはシリーズ第
一作であり、おれが解説を書きオビにもなっている。死んだアニメー
ターたちは若い子ばかりであったというが、悲しくてならない。なん
でそんな若い子が、と思い、屋上に逃げようとした子たちが、ドアに
鍵がかかっていたので逃げられず、折り重なって十九人も死んだとい
うに至っては、こっちまで苦しくなり、叫びそうになった。貴志祐介
のサイコ・ホラー「悪の教典」にも、屋上への扉が開かずに大勢が殺
されるのだが、そんなフィクションが現実になる世界なのだとつくづ
く思い知らされた。どんなに苦しかったことか。「死にたくない」と
思い、「ここで死ぬのは、こんな死に方はいやだ」と思ったであろう
ことを想像すると、胸を掻き毟られるようである。
「おれの小説を盗んだ」「パクリやがって」という犯人のことばは、
まるでおれを非難しているように聞こえてならない。おれもこういう
人間につきまとわれたことが何度かあるし、現在もツイッターでは、
「時をかける少女」はわたしの作品です、他もすべてわたしの作品で
す、返してほしいですという不気味な呟きが続いている。これを面白
がってリツイートするフォロワーも多いし、おれがここに書いたこと
でさらにリツイートする魯鈍者もいる。まあ、こっちはもうすぐ死ぬ
ので、あとはこのいやな世界で勝手にやれと言っておこう。
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