トップへ戻る

偽文士日碌

五月一日(金):1269-1270

 三日続けて伸輔の夢を見たのだが、夢というのは覚醒させまいとす
る機能があるから、もはや夢に登場しても睡眠を持続させる程度の衝
撃しか齎さなくなったのかと思っていたら、それからばったり見なく
なった。そこで毎夜、寝る前にラッツ&スターの「夢で逢えたら」を
歌っていたら、昨夜またしても彼の夢を見た。これからは毎夜「夢で
もし逢えたら、素敵なことね、あなたに逢えるまで、眠り続けたい」
と歌い続けることにしようと思う。「ミッドナイト・ウィズ・スター
ズ・アンド・ユー」を歌う時もあるし、「亡き王女のためのパヴァー
ヌ」を歌う時もあるし、「ウィル・ミート・アゲイン」を歌う時もあ
るし、江間章子作詞・團伊玖磨作曲の「花の街」を歌う時もある。
 昨夜の十時半頃だったか、光子が「伸輔、どこにいるのかしらね」
と言うから、おれが怒って「何言ってる。どこにもおらん」と言うと
しばらく涙を拭いていたが、何か作り話でもしてやればよかったんだ
ろうか。
 午後一時、「WIRED」副編集長・小谷知也からの電話取材を受
ける。テーマは主として新型コロナウイルスについてであり、過去の
文学作品やSFなどを話題にして喋る。ポスト・コロナについてもい
ろいろと訊かれる。この雑誌は季刊で、記事は六月二十三日発売の三
十七号に掲載される。
 夜は安く入手した本来料理屋へ行く筈の立派な蟹を食す。
ページ番号: 1269 1270

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。