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偽文士日碌

五月五日(火):1271-1272

 四日、二時に安威君がリムジンで迎えに来てくれて、いよいよ約一
か月ぶりの上京である。長いこと原宿の家に行っていないので気にな
って夢にまで見たりした。「神戸は車の数、結構多いですよ」と安威
君は言ったが、それでもいつもよりはだいぶ早く新神戸駅に着いた。
ずらり並んでいた弁当屋は軒並み休みで、ほとんど人気のないプラッ
トホームに上ると弁当の淡路屋も休み。売店も休み。どこで晩飯を調
達できるか不安になる。のぞみのグリーンの八号車には我われ夫婦を
含めて四、五人だけ。車内販売のワゴンにも弁当はない。仕方なくサ
ンドイッチを賈う。ふたつ買って何もなかった時の用心にひとつを食
べひとつを持って帰ることにする。
 東京駅に着いたが大丸が全店休業ということはわかっている。ろく
な晩飯にありつけないことはこれではっきりした。タクシーだけはた
くさんいる。タクシー乗り場に客の姿はなく、おれたちだけ。どこの
ホテルへ行っても馴染みの店は休みということがわかっているので、
自宅へ直行。家の筋向いのファミマだけが辛うじて開いていたので、
レトルトの酢豚だの牛乳だのバーボンのポケット瓶を買い、家にある
鯖の缶詰めを開け、飯を炊いて夕食。光子は郵便物の整理。おれは飲
み過ぎ。
 五日、朝の十時に行けばいちばん空いているという紀ノ国屋の情報
だったが、人は多かった。都知事の小池百合子が言った通り、三日分
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