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偽文士日碌

七月十一日(土):1283-1284

 上京する予定を次つぎと先延ばししたため、もう長いこと東京に行
っていない。コロナの感染者数増大と大雨による洪水を光子が恐れて
のことだ。コロナの方は、検査数を増やしたためとわかっているのだ
が、いくつかの取材や対談をキャンセルしたのは申し訳ないと思う。
それにしても、乾燥機を作動させていないので、地下の本箱の書物に
黴が生えていないかが心配だ。光子の心配は長良川や浜名湖の氾濫ら
しいが、あの辺の川は実際に氾濫し、長良川では鵜飼船が何隻か流さ
れている。
「花魁櫛」はやたら評判がいい。ショート・ショートなど、書いたの
は何十年振りだろう。あんなもの、書きたくはなかったのだが、原稿
料が破格なので書いてしまったのだ。死ぬまで今の破茶目茶朦朧体を
探求維持しようと思っていたのだが、恥ずかしい限りである。ただネ
ットではやはり「最近の小説は面白くない。王様はハダカだ」という
発言が出はじめているらしい。まあ、しかたあるまいし、実際そうな
のかもしれん。しかし原稿依頼はひっきりなしである。
 講談社の現代新書から頼まれていた「活劇映画と家族」の準備に取
りかかる。方向性を自分で規定するためにまず序章の「家族と疑似家
族」を書く。手はじめの第一章はラオール・ウォルシュ監督、ジェー
ムス・キャグニーの「白熱」と決める。
「文學界」丹羽健介からは、ジャズ小説の依頼。
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