トップへ戻る

偽文士日碌

三月二十三日(火):1329-1330

「新潮」矢野優から「お時さん」のゲラが送られてきた。付加された
手紙で「いわば、失われた時をかける女を求めて」という長いプルー
ストのパロディをやっているので笑ってしまう。
「もし」という副詞に校正からの「ママ?」という疑問符がついてい
るので悩んでしまう。原文は「もしあの店もお時さんも存在しないと
わかった時の衝撃を思い」なのだが、読み返してみると確かにどこか
おかしい。ほぼ半日考えた末、「もしほんとにあの店もお時さんも存
在しないのだとわかった時の衝撃を思い」にする。他は自分で直した
のが一カ所。
 現代新書の映画論が終盤に差しかかったので、「ハワード・ホーク
ス映画読本」を再読。著者山田宏一と蓮實重彦の対談で蓮實さんが、
ホークスの素晴らしさは関係と運動だけがあって実体がない、今のポ
ストモダン的な差異のない世界を先取りしていると言うと、宏一さん
が、そう言われると困ってしまって気が滅入ると反撥しているので笑
ってしまった。ホークスは、より遊び心が多いという点でモダニズム
文学以後のポストモダンだと蓮實さんは言ったのではないだろうか、
と、おれは思う。
「リオ・ブラボー」を書き終え、「エルダー兄弟」にもちょっと触れ
てから、タイロン・パワーとヘンリー・フォンダが兄弟をやった昔の
映画を思い出した。現在DVD取り寄せ中。
ページ番号: 1329 1330

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。