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偽文士日碌

十二月二十五日(金):259-260

 中村満が新著持参で来宅。わが推薦文が晴れがましく帯に印刷され
た短編集「新宿夜想曲」である。前作の長篇「紅蓮」と同じく朝日新
聞社からの出版。新宿の夜景を表紙にした瀟洒なペーパーバックであ
る。来年の一月八日に発売とやら。彼はまた来年の朗読会のプログラ
ムに載せる朝倉摂の絵を額に入れて持ってきてくれた。朝倉さん、わ
ざわざ表紙のために描いてくださったのである。ありがたいことだ。
家宝にしなければなるまい。
 さらに中村満、何やら平石滋と謀って大がかりな企みをしておるら
しい。おれの作家生活五十年を祝ってとのことであるが、内容はまだ
秘密である。これもまたありがたいことである。こんなことをしてく
れるファンが存在する作家は、作家多しと言えどもおれくらいではな
いか。
 朝日新聞の大上記者よりメールで、読者から、「漂流」第三十六回
の記事を見て、昔の「新評」を取り寄せたが、卒業論文は掲載されて
いなかったとのこと。現物が手許にありながら確認を怠ったための失
敗である。さすが朝日新聞、いろんな人が見ているのだなあと感心す
る。卒論は「ユリイカ」の昭和六十三年の五月号に掲載されたのだっ
た。「新評」の時は、載せようという話だけで、企画段階でとりやめ
になったのである。本になった時は直っているよう、大上さんに早速
データ変更の要請をする。
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