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偽文士日碌

十二月十七日(月):615-616

振興会への返事せぬままの欠席を詫びる。各社の若い新人女性編集者
に次から次から紹介され、文芸もついに女性上位の世界になったかと
慨嘆。講談社関係では何十年ぶりかで逢う人も多い。
 島田雅彦、奥泉光と共にタクシーで二次会の会場へ。先日の谷崎賞
の時に高橋源一郎の二次会で来たのと同じ店だ。マスターがおれのこ
とを憶えていてくれて、さっそくバーボンのロックが出てくる。詠美
さんの挨拶の次に、乾杯の挨拶をさせられる。「いきなりか」と皆を
笑わせてから、概ね次のようなことを喋る。
「今や小説は、何を書くかではなく、どう書くかの方が重要と言われ
る時代となった。この作品はエンターテインメントとして書こうと決
意するのもどう書くかのひとつの選択である。自分もそうだが、詠美
さんもまたエンタメと純文学の間を軽やかに飛翔している。そんなと
ころが親近感を持つ理由であります」
「なかなか、ちゃんとやりますね」と、驚いた様子で島田雅彦。奥泉
君が例によってフルートを吹く。酒が入っているのに凄い。
 凄い人物に逢った。詠美さんの友人で、もとプロレスラー、リング
ス社長の前田日明という大男である。彼の喫っていた葉巻がとてもい
い香りなので一服喫わせて貰ったが、その美味にうっとり。最高級の
葉巻であり、ここ二年ほどでベンツが一台買えるほどの消費をしたと
言う。日本葉巻協会に推薦すると言ったら、さらに高級品だという葉
巻を一本くれた。
 嶋田君にタクシーで送ってもらい、帰宅十一時半。
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