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偽文士日碌

二月四日(月):629-630

 あっ。なんてことだ。團十郎まで死んじまった。海老蔵の不祥事に
続いて染五郎は事故るわ勘三郎は死ぬわ、悪事続きではないか。歌舞
伎座を改築する時にちゃんとお祓いをしなかったからいけないのでは
ないのか。
 安岡章太郎も亡くなった。以前パーティでお目にかかった時、ちょ
うど断筆して落ち込んでいたおれに、とんでもなく差別的な歌を聞か
せ、笑わせてくれた人だ。すばらしい作家だったなあ。藤本義一と言
い、知っている人がみんなどんどん死んでいく。よろしいか。もうこ
れ以上誰も死なないように。さびしくてならんわ。
 現在、「偽文士日碌」の仮のゲラを読み返している。一日に郡司珠
子が打合せのため持って来てくれたのだ。過去の日記を読み返してい
ると、なんでこんなことがあったのを忘れていたのかという思いに駆
られることがしばしばだ。つい最近でさえ、講談社のパーティに出席
するのは初めてだなどと書いておきながら、一昨年の四月十一日の日
記にも同じことを書いている。これは吉川英治賞の時、受賞した森村
誠一に祝いを言うため駆けつけたもので、講談社の人とは誰とも話さ
なかったので忘れていたのである。あわてて丸括弧で補正する。
 光子が整体に出かけたあと、豆腐屋のラッパが聞こえ、あわてて買
いに出る。月曜日だから野口屋が来たのだ。久しぶりに豆腐、納豆、
厚揚げ、卵などを買い込む。
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