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偽文士日碌

七月十九日(金):683-684

藝統括次長の武藤旬が迎えに来る。タクシーで骨董通りにある会席料
理の「みな瀬」へ。階段で三階まであがり、座敷に通ると屋上は坪庭
になっている。ほどなく吉安章、田中光子、大嶋由美子、丹羽健介と
いうお馴染みの面面。吉安君は局長に昇進、今月号から各雑誌の発行
人として奥付に名前が載る。大嶋さんは書籍編集部にまわり、「文學
界」の担当は丹羽君になる。武藤君は文庫になる「巨船ベラス・レト
ラス」のゲラを持ってきてくれた。おれは「一族散らし語り」の原稿
を田中編集長に渡す。
 皆、それぞれ好みの酒をとり、おれはジャック・ダニエルのハイボ
ール。料理はいずれも凝っていて、通常の日本料理に慣れた客向けの
珍しい味が多い。最初の冷した鉢が磯葛素麺に生湯葉、前菜が蓮芋豆
乳寄せ、蟹身、数の子と白瓜の白和え、鳥レーズン煮凝りのまりも見
立て、小鍋の蝦夷鮑、熱した黒石で焼く黒毛和牛。このあたりで大嶋
さんが「一族散らし語り」を読みはじめたので、料理を食べながらそ
の話を読むのはまずいと耳打ちするとあわてて中断したのが面白かっ
た。それでも田中さんは気になるのか、ちらちらとめくり返していた
ようだ。そのあと白桃の摺流しにタイムを浸した珍味、強肴が鴨茄子
と海老などのチーズ味で、これも旨かった。煮物が冬瓜スープ煮に栗
の麩に石川小芋、ご飯は釜焚きで上に穴子の蒲焼きが乗っていた。最
後は皆で栗焼酎のダバダ火振をぐい飲みしてお開き。光子は先日来の
客疲れで欠席し、恒例のわが家の夜宴はなし。またタクシーで今度は
丹羽君に送ってもらい、帰宅十時半。
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