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偽文士日碌

二月十五日(土):741-742

きのハイヤーでの帰途は、退勤時と雪が重なって大渋滞の筈の一般道
を避け、高速で外苑前まで走る。雪はまださほどではない。帰宅七時
半。光子は佐藤さんから美しいミモザの大きな花束を頂いていた。食
事中、どすん、どすんと屋根から雪が落ちる音。深夜に起きて羽生結
弦の金メダルが決定したフィギュアを見る。
 朝起きると一面の積雪だ。今日神戸に帰るつもりだったのだが、宅
急便も来られないと聞き、一日延ばすことにする。こんなこともあろ
うかと、昨日光子が食料品を大量に買い込んできたのだ。
 昼過ぎ、おれの大一座の役者で工務店の社長の上山克彦が電話をし
てくる。雪掻きに行きましょうかというので光子は大喜び。さっそく
頼むと、早稲田の政経二年の谷川舜という可愛い男の子をつれてやっ
てきた。雪掻きが終り、珈琲を飲みながら二人と話す。谷川君は鹿児
島出身でラサール卒業、おれの作品をよく読んでくれていて、上山君
の「筒井康隆の家へ雪掻きに行かないか」という誘いを受け大喜びで
やってきたと言う。「群像」連載の「創作の極意と掟」もずっと読ん
でいたというから、トークイベントで売る予定の「創作の極意と掟-
-小説は誰にも書ける」と書いて署名落款した色紙を一枚贈呈する。
若者は大喜び。
 夕食はカナダに負けたカーリングを見る。屋根には雪、暖かい部屋
で夫婦水入らずの旨い夕食、妻はワインでおれは焼酎、オリンピック
をテレビで見ているという、言わば絵に描いたような幸福。今夜は疲
れたので十一時就寝。明日は神戸に帰れるのだろうか。
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