トップへ戻る

偽文士日碌

八月二十日(水):785-786

「文學界」十一月号のための随筆「ウクライナ幻想」を書きはじめる
が、神戸の家にある「イリヤ・ムウロメツ」を読み返さねば書けぬと
知り、中断。ふたつ家があるとかえって何かと不便であり、混乱した
りもする。
 午後三時、文藝春秋の文藝部副部長になった田中光子と「文學界」
編集長になった武藤旬が挨拶に来宅。九月末に出る「繁栄の昭和」の
あれやこれやを打合せする。表紙の高清子の写真はより鮮明なものが
東宝にあった。定価がまだ決らない。九月二十八日日曜日の二時、青
山ブックセンターで佐々木敦とトークショーをやるのだが、その時に
即売する署名落款入りの本をどうするかで相談。出版の前触れとして
「文學界」十月号には藤田直哉の小生に関する評論が掲載されるそう
だ。佐々木君といい、中条省平といい、何人かの若い評論家がしばし
ばおれのことを取りあげてくれるのは嬉しく、有難いことだ。
 書きあげた「世界はゴ冗談」だが、これはエンタメだし、少しでも
稿料は高い方がいいので、そう言って楠瀬啓之に託しておいたのだっ
たが、結局「小説新潮」に渡したということである。この新井久幸編
集長は以前「繁栄の昭和」を「STORY POWER」に載せてく
れた人で、「大きな著者の読み切りの短篇などなかなか頂けないので
ぜひ新年号に載せたい」ということである。書いたものの掲載が遅く
なると、社会情勢が変化するのではないかなど、気の揉めることだ。
ページ番号: 785 786

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。