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偽文士日碌

十一月十日(月):83-84

 せっかく王手をかけていながら、なんと巨人惜敗。原は口惜しいだ
ろうなあ。残念だが、いつも行く西武百貨店が記念セールをするので
光子は喜んでいる。
 近くのイタリア料理店「リストランテ・フィオーレ」のボーイ長が
ワインを持って訪ねてきた。最近二度、満席で予約をとれなかったか
らその詫びのしるしだろう。持ってきたイタリア・ワインはNOVE
LLO、つまりフランス語のNOUVEAUである。
 迎えの車が来て、久しぶりに山の上ホテルへ行く。十年前まではよ
く泊っていた懐かしいホテルだが、ここもロビーなどは禁煙になって
いた。
 今日は桐野夏生との対談。彼女の新著「女神記」は、各国の神話を
現代的に小説化するという世界的な企画に応じた作品で、角川書店か
ら出版され、今日の対談は「野生時代」一月号に掲載される。桐野さ
んがぎりぎりまで推敲していたため、こちらもつい昨日、最新の校正
刷りを読んだばかりだ。出来はよく、古事記に沖縄をからめて上手に
まとめている。ずいぶん苦労したらしく、これからもまだ推敲するの
だと言う。神話の理不尽さや他国の神話についてなど、話がはずむ。
話題はずいぶんあちこちへ飛んだが、これは谷崎賞の授賞式のスピー
チでも言ったように、いい作品というものはいろんなことを考えさせ
てくれるものだからである。
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