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偽文士日碌

十一月十五日(土):93-94

ーヒーが素晴らしかったらしい。
 さらに北上して十津川温泉に着く。大正十三年創業の吉乃屋という
古い温泉旅館は、部屋に入ると十津川のダム湖が見おろせ、その彼方
の山の景色もみごとだ。すぐ一階の露天風呂に行って、山腹を見渡し
ながら熱い湯に浸る。かけ流しの湯といって、そのままでは熱過ぎる
から自然に冷ましているらしい。
 また車で谷瀬の吊橋に向かう。この吊橋はちょっと前まで日本最長
だったそうだが、四国にできた吊橋に一位の座を奪われた。全長二百
九十七メートル、昭和二十三年にできたものだと言う。高所恐怖症の
おれは二十メートルほど進んで、揺れのために気分が悪くなって引き
返した。外国の吊橋で怖い目に遭っている光子も五メートルくらいで
早早に引き返す。新さんと喜美子さんは中ほどまで行ったようだ。
 宿の夕食は囲炉裏のある個室に用意されていた。猪鍋が出た。その
他絶品は蕗の薹の味噌や蒟蒻などの田舎料理、あとで聞けばここの主
人が食材に凝っていて、評判がいいとのこと。焼酎の温泉割りを飲み
ながらほとんど食べてしまう。
 部屋ではまたマッサージにかかる。何しろ凝っているのだ。今回は
男性がやってきて、ちょっと変ったマッサージをしてくれる。いろん
な人に揉んでもらった方が効果があるように思う。しかし二日連続の
早起きで疲れていて、揉んでもらいながら熟睡してしまう。光子に聞
けば大鼾だったそうだ。
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