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偽文士日碌

十一月十五日(土):91-92

 朝七時にルーム・サーヴィスで朝食。八時、新さん夫婦が迎えに来
てくれて、新さんの運転するベンツ500Eでホテルを出発。名神高
速を走り、吹田から近畿道に入り、さらに阪和道を走る。何しろ新さ
んはA級ライセンスの持主だから助手席に乗っていても安心できる。
姉妹は後部座席。
 和歌山県に入り、阪和道をおりて上富田町を左折し、国道311号
線、即ち熊野ロマン街道に入る。このあたりから周囲は山に囲まれ、
緑と紅と黄に彩られたみごとな色彩の饗宴となる。日本画家が描きた
がる屹立した杉木立の、緑一色の森もなかなかのものだが、なんとい
っても雑木林の配色たるや絶品である。下品な配色と言う人もいよう
が、おれはこれが好きだ。
 田辺市の鮎川というところで昼食。おれはジュースを飲んだだけだ
が、新さんと光子はうどんを食べ、食感が素晴らしいと褒める。さら
に車で、時おり熊野古道への入口が見え隠れする、世界遺産の熊野古
道中辺路に沿った道をえんえんと走る。168号線に入って少し北上
すると、大斎原のでかい鳥居がある。突然見えるので仰天する。高さ
三十四メートルのこの大鳥居は、ここにあった熊野本宮大社が熊野川
の氾濫で流されたあと、平成十二年になって建てられたものである。
この大鳥居をすぐ目の前に眺めることのできる喫茶店で一服。おれは
例によってアイスクリームだが、姉妹によれば時間をかけて淹れたコ
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