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偽文士日碌

一月二十日(火) :129-130

 いよいよ開演。最初は「のだめカンタービレ」の原作やドラマに協
力した茂木大輔が東京フィルを指揮して、そのテーマ曲のベートーベ
ン第七、第一楽章をやる。ご挨拶代りとのこと。次が山下洋輔作曲の
ヴァイオリン・ソナタを挟間美帆が編曲した四楽章の管弦楽曲。山下
氏が登場して解説をする。挟間美帆の天才ぶりに改めて驚く。山下氏
はまだ音大在学中のこんな人をどうやって発見したのだろう。彼女の
席は伸輔の隣だった。
 次が茂木大輔オリジナルの「管弦楽のための《ファンファーラ》」
である。茂木氏のパフォーマンスに客は爆笑。トルコ音楽というのは
たしかにあとに残る。このあとの休憩時間に喫煙室へ行くと、大声で
歌っているやつがいた。
 第二部の最初は、打楽器奏者・植松透とオーボエ・茂木大輔のふた
りだけによる茂木氏作曲「オーボエと大太鼓のための《4つのナイフ
ラ》」である。最初に茂木氏がチューニングの音を出し、大太鼓がそ
れは不要とかぶりを振るギャグ。茂木氏は熱演のあまりふらふらにな
って退場し、そのあと登場した山下氏によれば「楽屋で今、死んでい
ます」とのこと。さもありなんと思う。
 いよいよ最後はダンヴァニだ。山下洋輔・挟間美帆による「ピアノ
と管弦楽のための交響詩《ダンシング・ヴァニティ》」である。まこ
とに奇妙な体験だった。自分の小説を音楽で追体験するというのは、
他の作家にはなかったことではないだろうか。小説から想を得たとい
う音楽はあるものの、それはある曲想を得たというに過ぎない。この
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