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偽文士日碌

四月十六日(木):167-168

ふたたびスピーチが始まり、何人かのスピーチののち、早く終われと
北方に脅された東野が匆匆に話を切りあげ、北方が喋り、やっとおれ
の番になるが、もはや酔っぱらっている。
「エルちゃんと言えばある業界ではLSDのこと、それだけでも親近
感がある(笑)。この不況の風が銀座にも吹く中、エルちゃんだけは
繁盛している。この上はさらに文壇バーとしての生き残りを賭け、も
っと作家割引きというものをやらねばならない(笑)。おれのような
売れっ子からは取ればいいが、売れてない作家をもっと優遇すべきで
ある(笑)。さらには編集者割引きというものもやればよろしい。も
うやっているのかも知れんが(笑)。そしてさらに作家の日というの
を作ればどうか。毎月この日は作家の誰それが必ず来ると決めておけ
ば、それを目当てに編集者も来る(笑)。その編集者を目当てに売れ
てない作家も来る(笑)。誰が売れている作家で誰が売れていない作
家か、知ってはいるだろうが、わからなければおれが教えてあげます
(笑)」
 おれはトリではなく、最後は渡辺淳一がお得意の艶笑談で締めた。
 閉会後は「エル」の女の子四人に囲まれて銀座を「エル」まで移動
したが、ずいぶん人目を引いた。睨みつけていくリーマンもいて、面
白かった。「エル」では藤田宣永、高橋洋子らと一緒に飲む。一年前
にキープしたワイルド・ターキーのライは、全然減っていなかったの
で、高橋洋子に振舞う。店を十時半に出る。銀座はずいぶん人が少く
なっている。帰宅十一時。
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