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偽文士日碌

九月九日(火):789-790

読む。ほんとはこれと一緒に「ウクライナ幻想」が載る筈だったのだ
が一ケ月遅れてしまった。原稿を渡したあとで停戦合意があり、おや
おやと思ったのだが、これはどうなるかまだわからぬ。中央公論新社
から出る谷崎潤一郎全集の推薦文を、急いで書く。
 四時二十分、中央公論新社の関智良が迎えに来てくれてパレスホテ
ルの谷崎賞選考会へ。すでに池澤夏樹、川上弘美、桐野夏生が来てい
て、ほどなく堀江敏幸も到着。選考前は全員緊張していてあまり喋ら
ない。明日が谷崎賞選考会だと言うので川上弘美が二軒めへ飲みに行
かずに帰宅したという地獄耳の情報を開陳すると、弘美さんは恥かし
そうに実は飲みに行ったんですとのこと。谷崎全集の推薦文を滝澤晶
子に渡す。
 選考会は比較的てきぱきと進んで、スウェーデンの作家ヨナス・ヨ
ナソン「窓から逃げた百歳の老人」とのシンクロニシティを指摘して
おれが強力に推した奥泉光「東京自叙伝」に決定。そのあと恒例の夕
食会は昨年と同じ中華料理の琥珀宮へ。いつも夕食会になると全員談
論風発となって愉しい。桐野夏生の少女時代に遭遇したという怪談が
凄くて面白かった。おれは例のふらふら問題を話し、自分では頭はは
っきりしているつもりだが、はっきりしてますよねと全員に訊ねると、
皆はっきりしていると言ってくれたのだが、これからは時おり「わし
どうもないよね」と人に訊ねなければなるまい。紹興酒はほぼ一週間
ぶりの酒だったので三杯しか飲めず。話が弾んでお開きは九時半頃。
帰宅十時。またビールを飲んで就寝十二時。
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