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偽文士日碌

九月九日(火):787-788

 一ケ月ほど前、バーボンをひと瓶の約半分飲んでしまい、次の日ち
ょっとふらふらしたので、これはいかん二日酔いだと思ってその晩は
飲まなかった。それでも次の日まだふらふらするのでその晩も酒を控
えたのだが次の日、まだふらふらする。アル中ではない。アル中なら
今夜は酒をやめようという発想は絶対にないのだ。そこでそれまで時
おり服んでいたマイスリーという睡眠導入剤をきっぱりやめたが、ま
だふらふらする。ははあこれは血圧の低下だなと思い、事実それまで
必ず毎朝服むようにとかかりつけの山崎先生から言われていたノルバ
スクという血圧降下剤を、上が百十七になったのを機に服むのをやめ
た。だが、まだふらふらする。心配になり、山崎さんに紹介してもら
った神戸医療センターでMRI検査を受けた。結果は、歳のわりには
大脳の萎縮が大きいが、それはたいしたことはなく、むしろ海馬回が
七十歳台にしては立派だと言われ、アルツハイマーではないこともは
っきりした。ではいったい何だ。それまで年寄りの男女がふらふら歩
いているのを見て何であんなになるのかなあと不思議だったのだが、
ははあこれかと思い当った。歳なのである。ふらふらするといっても
不愉快ではなく、むしろ昼間からちょっと酔っているかのようにいい
気持なのだ。今ではだいぶ慣れてきた。諸兄も歳をとるのを楽しみに
していたらよろしい。
「文學界」に載った藤田直哉の「超虚構の果てに――筒井康隆論」を
ページ番号: 787 788

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