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偽文士日碌

十月二十一日(金):993-994

 今のところおれは天皇と同い年だ。この十一月でおれがひとつ歳下
になる。来年あたり、生前退位しなきゃならんかな。
 四時十五分、郡司珠子が迎えに来てくれて帝国ホテルへ。山田風太
郎賞の選考会なのである。早速、今回の候補作品が長いものばかり六
作品であり、読み終えるのに苦労したという苦言がほぼ全員から発せ
られて、担当者が平謝り。林真理子などは特にある長大で説明のやた
らに多い作品に激怒していた。今年は実力の拮抗があり、最初から評
が割れた。拮抗とはいうものの決して高いレベルの拮抗ではない。そ
れぞれがそれぞれなりに不徹底なのだ。純文学の場合ははっきりと常
識や良識などは排除するが、エンタメの場合はどこが限界かわからな
いので若い人は悩むのだろう。おれは純文学もエンタメも区別しない
で書いているのだが、若い人の場合は手加減が過ぎるようだ。作家に
はある種の覚悟が必要なのである。結果は夢枕獏が強く推し、京極夏
彦も推した塩田武士の「罪の声」に決定。
 隣接する部屋で夕食会。記者会見には奥泉光が出た。受賞者が到着
し、息子より十歳も若いその風貌に驚く。三十七歳というから、驚く
ほどではないのだが。
 帝国ホテルだけあって料理は美味。おれはウィスキーの水割りだっ
たが、薄いので六、七杯飲んだ。隣室のパーティに出席していた井沢
元彦が挨拶に来た。帰途はまた郡司さんに送られて帰宅。
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