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偽文士日碌

十月十六日(金):1297-1298

 今日は風太郎賞の選考会で、岸本亜紀が一時過ぎに迎えに来てくれ
た。東京会館のアゼリアに着くと、コロナ対策で選考委員の席すべて
に三方のスクリーンがあってものものしい。全員揃って選考が始まっ
たものの、声が篭って聞こえずらい。貴志祐介、恩田陸の両氏は初参
加である。
 のっけから、おれが丸をつけた河野裕「昨日星を探した言い訳」に
バッテンがふたつもついて凹む。それとは逆に、あまり評価していな
い今村翔吾「じんかん」に丸が四つもつき、これでもうあきらめムー
ドに入る。
 選考は粛粛と進み、諸氏自説を述べる。例によってと言うか、また
してもと言うか、林真理子とおれの意見が正反対で真っ向から対立、
意外にも貴志祐介までがほとんどおれと正反対の意見である。最終的
におれの推薦作に賛同がないのは、おれが老齢となり、どうやら暴力
沙汰や血なまぐさい戦闘場面が受け付けなくなったからかと心配した
のだが、奥泉光がおれと同意見だったのでちょっと安心する。それに
しても「松永弾正は実はいい奴だった」というテーマの作品が受賞す
るとはなあ。松永久秀、筒井順慶の天敵ではないか。
 選考は二時間ちょっとで終わり、今村氏が大喜びで授賞を快諾、貴
志君が記者会見に立つ。今回、懇親会はなし。帰宅三時。
 夜、送られてきた眉村卓の遺作「その果てを知らず」を読む。
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