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偽文士日碌

十月五日(日):73-74

着替えを済ませる。光子が戻ってきて、七分の入りだと言うので、ま
ずまず安心する。
 光子はまた客席へ行き、おれは舞台袖へ。一ベルが鳴り、おれは舞
台中央の台に板付きで腰掛ける。本ベルが鳴る。朗読劇「関節話法」
の開演である。幕があがる。
 いつもの通り、ゆっくりと読み始める。たいていの本は最初のうち
が退屈なので、へたな朗読者は早く面白い部分まで行こうとして速読
するが、これはよくない。最初の設定をしっかりやっておかないと、
後半の笑いがない。譜面台まで移動した頃から、ぼつぼつ笑いが起り
はじめる。もうしめたものである。
 大笑いと拍手で「関節話法」が終り、おれはアンコールで「発明後
のパターン」を六十年代篇、現代篇と立て続けにやる。これも大受け
である。今日の出来は今までで最高の出来ではなかったか。
 楽屋には親戚連中やファン連中がやってくる。ファンたちはたいて
い二、三回はこの舞台を見ているのだが、有難いことである。
 ホテルの日本料理「たん熊」で、義妹夫婦、義弟夫婦と食事。焼き
松茸、子持ち鮎の煮浸しなどに舌鼓を打ちながらおれは焼酎を二杯。
ハイヤーで帰宅十一時。やはりひと仕事終えたという気分になるのは
なんといっても舞台だ。
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