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偽文士日碌

十一月十四日(金):87-88

 新幹線に乗るといつも筑紫哲也のことを思い出す。なぜかひとつ前
の席に筑紫さんが乗っている。そんなことが三度続けてあった。「朝
日ジャーナル」時代に「若者たちの大神」というシリーズでインタヴ
ューされて以来のつきあいで、会うたび、短い時間だがその時その時
の事件や社会問題を語りあったものである。最近なら絶対に経済危機
について話していた筈だ。またしても一歳年下の人が鬼籍に入った。
寂しいことである。
 取材も兼ねて光子と京都へ。京都ホテル・オークラにチェックイン
してから、タクシーでまず世界遺産の下鴨神社(賀茂御祖神社)へ行
く。境内を散策し、光子はここで家族全員のお守りを干支にあわせて
求める。次は上賀茂神社へ。ここの紅葉、黄葉は美しかった。鴨川の
土手にはいろいろな木が植えられていて、それらの紅葉、黄葉、そし
て緑が賑やかにも色鮮やかである。昨年は紅葉がなく、これほど美し
くはなかったという運転士の話。
 ホテルへ戻ってしばらくすると、新さん、喜美子さん夫婦が迎えに
きてくれた。岡本歯科医院はここからすぐ近くの寺町にあり、光子が
携帯電話を忘れてきたため連絡がとれず、二人は歩いてきたのだ。タ
クシーに乗り、四条河原町へ出る。東華菜館という中華料理店のビル
は、一九二〇年代からの古い建物で、戦後すぐ、満州から一家で帰国
した新さんの父君がよく来ていた店だという。子供の頃、新さんもつ
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