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偽文士日碌

九月十六日(水):227-228

 決して「バカの壁」のパロディを書けば面白いだろうと考えたので
はない。「バカの壁」は拝読したが、小生が想像していたものとは少
し違った内容であり、読むまでおれが想像していた「バカの壁」の内
容は、おれが書こうとしている「アホの壁」に近いものだったのだ。
おれが考えた「アホの壁」とは、養老さんの「バカの壁」のような人
と人との間のコミュニケーションを阻害する壁ではなく、人それぞれ
の、良識とアホとの間に立ちはだかる壁のことである。
 それでも今日は「アホの壁」のことをあまり言わないでおこうとい
う石井氏と矢野君の打合せであったらしい。だがおれは、席につくな
り用意してきた原稿、最初の二十枚ほどを見せた。ご両人びっくり。
さっそく読んで、面白いと喜んでくれた。この調子で書いてくれとの
ことであったのでこっちも安心する。
 しばらくは料理を食べながら虫の声に耳をすます。ここの女将の曾
祖父は原三渓と言い、谷川徹三や和辻哲郎とも親交のあった、実業家
で茶人で芸術家のパトロンでもあった人。その人が創設した三渓園と
いう庭園がすぐ隣にある。この三渓が創った自慢の料理で中華風の三
渓麺というのを頂戴する。また、三渓が谷川、和辻に振舞ったと言わ
れる蓮の実のご飯をいただくこともできた。白飯の上に蓮の実を散ら
した薄いスープがかかっていて、実に美味であり、これを発案した三
渓はこれを浄土飯とも、蓮華飯とも言っていたという。 
 いつの間にか時間が経ち、また矢野君にハイヤーで送ってもらって
帰宅。九時半。
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