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偽文士日碌

十一月十一日(木):389-390

 世の中はAPECだのロシア大統領だの胡錦涛だのと何やら騒がし
いが知ったことではない。午後二時に家を出て、新幹線で京都へ。八
条口に出ると岡本新・喜美子夫婦がベンツで待ってくれていた。例に
よって夫婦二組が同乗、新さんが運転、おれは助手席、妻たちは後部
座席。京都市内を通って一号線で山科を抜け、百六十一号線、即ち無
料の湖西道路を走る。よく晴れている。まだ山は紅葉も黄葉もしてい
ない。今年はずいぶん遅いようだ。右手に琵琶湖が見えてくる。仰木
雄琴で湖西道路を降りて温泉地へ午後五時到着。
 この雄琴温泉には、乃村工藝社時代に社員の慰安旅行で一度だけ来
たことがある。戦前は色街で有名だったところだから、雄琴温泉へ行
くと言うと今でも女遊びに行くのかと勘違いする人もいるが、現在は
まったくそのようなところではない。ここの「花街道」という旅館は
新さんの洛北高校時代の女友達のお兄さんが経営しているとかで、歓
待を受ける。五階の部屋に通され、カーテンを開けると左右はるか、
湖が見渡せる。やはり海の見えるでかい桧の風呂が部屋についていて
さっそくひと風呂浴びる。これは温泉かけ流しであり、ひと晩中入れ
る。
 われわれの食事のための和室に四人集って夕食。伊勢海老のバター
蝋焼き、近江牛の陶板焼、目板鰈の唐揚げなど。最後は松茸ご飯。お
れは風変りな銘柄の芋焼酎を次つぎに試す。食事が終りかけた頃、新
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