トップへ戻る

偽文士日碌

四月四日(土):863-864

 朝十時、裕君が車で迎えに来る。玄関を入るなり「うわあ。懐かし
い匂いだ」と叫ぶ。子供の頃に来て以来なのだ。わが家の匂いがどん
なものか、おれは知らない。裕君の車はトヨタのハイブリッド車。弟
の篤君は家族と共に近くまで来て朝食をとっているらしい。
 厄除八幡前で待ち合わせる。やがて篤君一家がやってくる。篤君の
運転するベンツのジープでおれは助手席、光子、喜美子の姉妹は後部
座席に。新さんが運転していた時と同じ配置だ。新さんが死んで誰も
どこへも連れて行ってくれなくなり、おれが寂しいだろうというので
新さんの息子二人がおれたちを旅行に誘ってくれたのである。
 ベンツのジープは六人乗り、NATO軍も使っているという車体の
高い頑丈な車で、乗るのは初めてである。裕君の車には篤君の奥さん
の敬子さんとその子供たち、中二の岳洋君と小六の悠平君が乗る。
 先導したりされたりする形で二台は名谷インターから第二神明に入
り、ビーバップの収録に行く時とは逆の方向へ向かう。姫路からは播
但連絡道路に入り、福崎で中国道に入る。桜が美しく、時にはえんえ
んと連なる桜並木を見ながら北上。米子道から落合JCT0を経て湯
原で降りる。倉吉市街の「土蔵そば」に入る。古民家で、挽き臼など
蕎麦を挽いた道具がある。その二階で名物の土蔵そばを食べる。二段
重ねの濃厚な蕎麦である。周辺の赤瓦・白壁土蔵群などの町並みを散
策。玉川という堀川沿いに大勢が菜の花を飾り付けていて、明日は雛
ページ番号: 863 864

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。