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偽文士日碌

十月二十日(火):905-906

 午後三時、新潮社の連中、大挙して来宅。楠瀬啓之には「モナドの
領域」のゲラを渡す。論理計算式の組み替えた部分や書き足した部分
を見せ、校正係のよくやってくれたことに謝意を表しておく。伸輔の
装幀作業は進んでいるらしい。
 石戸谷渉は後任の岑裕貴をつれてきて紹介してくれた。これから次
つぎと出る復活文庫本の打合せ。何やかやと打合せ事項が多くにのぼ
り、何を打合せたのかよく憶えていない。岑君は文庫でアンソロジイ
を出すつもりらしいが、はてどこからも出ていない収録作品があるの
かどうか。
 広報宣伝部の石平聡がカメラマンをつれてきていて、プロフィール
の本格的な撮影に入る。カメラマンがもっと眼を大きく開けというの
で、それでは笑顔にならないし、つい怒ったような顔になってしまう
のだが、どうやら「明治の大文豪風」にというテーマで、怒ったよう
な顔が欲しかったらしい。早くそう言えばいいのに。そのあと楠瀬君
が、モナド用の写真を要求し、またしても笑顔の撮影。なんだかぐっ
たりと疲れてしまう。
 夕食の折、旭化成の手抜き杭打ち工事のニュースを見て、いやなこ
とを思い出してしまった。乃村工藝社時代、下請けに百貨店の仕事を
やらせたら、ひどい出来でやりなおしとなり、大赤字になったいやな
いやな記憶。さて明日は「所さん」の収録。慌ただしい。
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