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偽文士日碌

十二月十七日(月):613-614

 なんと講談社のパーティに行くのは生れて初めてなのである。それ
というのも四十年も前に「小説現代」に書かなくなってから一度も原
稿依頼がなかったため、行く必要もなかったからだ。ただ一度「悪魔
の辞典」の翻訳が出たが、これは文芸とは無縁の部署からだった。
 呼んでいたタクシーが早いめに来たのと道が空いていたのとで十五
分も早く着いてしまう。授賞式は帝国ホテル二階・孔雀の間で午後六
時から。最初の社長挨拶で野間省伸の若さに驚く。野間文芸新人賞が
ふたり、野間児童文学賞がひとり、そして野間文芸賞が「ジェントル
マン」を書いた山田詠美である。以前おれのひとり芝居を見に来てく
れたりもしたので、そのお返しの意味の出席だ。選評は津島佑子で、
やはり他の賞の選考委員と違って話は面白い。児童文学者の挨拶はな
んとも悪達者で、新人ふたりの挨拶は、女性が内気で男性が破れかぶ
れ、どちらもあっけなく短い。面白かった。山田詠美の短かめの挨拶
はさすがであり、貫禄充分だ。
 パーティとなり、いろんな人と逢う。「群像」で一月号から連載が
始まった「創作の極意と掟」の「色気」の項でとりあげた稲葉真弓さ
んが和服姿でやってきて、大喜びで礼を言う。出版の嶋田君が来て、
詠美さんの二次会に誘われる。野間社長が挨拶に来たので、社長がヘ
ビースモーカーであるが故にこのパーティ会場も喫煙可となった由、
まことに有難いと謝意を述べておく。新潮社の社長も来たので、文芸
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