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偽文士日碌

四月一日(水):163-164

 昨夜、光子たちが帰宅したのは七時だった。常磐線が一時間も遅れ
たらしい。それでも鍾乳洞や何やかやを見てまわって、恒司はご機嫌
である。伸輔一家はわが家にもう一泊。
 朝、資源ゴミを出していると、新聞紙や雑誌類をいっぱい積んだト
ラックがやってきて停り、しょぼくれた男が降りてきて、出したばか
りの新聞雑誌を指しなから「いいですか」と聞く。
「駄目だ」と、おれは言った。「それは東京都のものだろうが」
 男はちょっと頭を下げてトラックに戻り、去っていった。
 午後二時、朝日新聞社・大上朝美が来る。連載に掲載するための写
真選びである。先日やってきたカメラマンはなかなか優秀で、いずれ
もよく撮れている。こっちからは第三回「弓館芳夫『西遊記』」の原
稿を渡す。
 午後五時、伸輔一家が帰っていく。恒司はまったく泣かなくなった
ものの、我儘はあいかわらずだ。
「裏辞典」を少し書く。本日の傑作。 
よつゆ【夜露】バルトリン腺液。
よねつ【余熱】平手打ちを食らったあと。
よびな【呼名】出身地で呼ばれることが多いが越中の人はいやがる。
よみ【黄泉】腐った女神のいる所。
よみち【夜道】すれ違うとき、どちらも怯えている。
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