トップへ戻る

偽文士日碌

十月二十六日(月):239-240

 母八重の十七回忌である。今回はもう親戚を誰も招ばず、夫婦二人
だけでやることにする。午後一時、家を出発。タクシーで新神戸駅。
新幹線で新大阪駅。タクシーで帝国ホテル大阪。このホテル、久しぶ
りなのでいちいち戸まどう。雨が降るかもしれないので傘を持ってホ
テルを出る。タクシーで千日前の墓地へ。
 墓の掃除をし、花を供えて拝む。そのあと心斎橋筋を三津寺筋まで
歩く。来るたびに様子が変っていて、昔ながらの老舗は小倉屋、松前
屋などの昆布の店と、芝翫香、福寿司、鳩居堂などほんの数えるほど
である。
 三津寺は本堂に、それまで秘蔵されていた仏像九体すべてが並んで
いた。見たがる人が多いので表へ出してしまったらしい。通常、寺の
本尊は三体セットなのだが、戦争で焼け出された寺からここへ集って
きたものという。法要が終ったあと、この仏像はみなまっ黒けだが、
洗ったり磨いたりしてはいけないのかと住職に訊くと、それはいけな
い、埃を払うだけでよいとのこと。わが家の仏壇にある仏さまも洗っ
てはいけないのだそうだ。
 三津寺を出てさらに心斎橋筋を北へ。光子は髪飾りを買う。
 ホテルへ戻り、最上階の中華料理「ジャスミン・ガーデン」で夕食
したあと、向かいのラウンジで一杯やる。部屋に戻り、マッサージに
かかる。ふらふらになり、ぐっすり寝てしまう。明日は上京だ。 
ページ番号: 239 240

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。