トップへ戻る

偽文士日碌

十二月三日(金):413-414

 四時に丹羽君がハイヤーで迎えに来る。少し前に来ていた伸輔と共
に家族三人が同乗してホテルオークラへ。菊池寛賞の授賞式である。
すでに松野賀宣が本館ロビーに来ていた。家族を先に式場へ行かせ、
控室へ行き、選考顧問の東海林さだをと平岩弓枝に逢い、挨拶。もう
ひとりの選考顧問・養老孟司にはのちに廊下で逢い、ちょっと話す。
文藝春秋社長の平尾隆弘が「受賞されてどうお思いですか」などと心
配そうに訊いてくる。五時過ぎになり、受賞者全員が式場へ。途中、
川口淳一郎先生と挨拶。受賞者席で隣になった現代俳句の金子兜太と
初対面の挨拶をし何やかやと話す。金子さん、九十一歳なのに元気で
ある。前の方の席には家族と松野吉晃一家。賞の贈呈式と平岩さんの
挨拶のあと、いよいよおれの受賞の挨拶。三分でやってくれと言われ
たので、きっかり三分でやって見せた。記憶通りに再録する。
「文藝春秋からやっと賞を戴くことができました(笑)。昔、直木賞
候補にされて落されて、それが三回続いて、それから四十五年(笑)、
やっと戴くことができて、まあ嬉しいんですが、同じことならもっと
早く欲しかった(笑)。と言いますのも、受賞して、過去の受賞者の顔
ぶれを眺めているうち、次第に有難みが薄らいでいくということがあ
ります(笑)。だから早く欲しかった。しかし賞金の百万円というの
は非常にありがたい(笑)。実は私、つい先ごろ日本ペンクラブに百
万円寄附したばかりなんですよ。ペンクラブ東京大会をやるので世界
ページ番号: 413 414

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。