に風邪をひきそうだし、大浴場は他の客と一緒になるのが嫌なので、
時間極めの貸切りで仙人の湯というものへ夫婦で一度浸かっただけ。
部屋にあるのは普通の天然水を沸かしたものだというので入らなかっ
た。その仙人の湯へ行くにも、一度フロントまで行かねばならず、い
ちいちえんえんと歩きエレベーター三台を乗り継いで行かねばならな
いから、何度も行く気がしないのである。
夕食も、やはりフロントの一階上の部屋だから、ほぼ同じ行程を辿
ることになる。老人はへとへとになる。足がよくなっていてほんとに
よかった。昨日と同じく四人ひと部屋の食事となる。客は多く、それ
も男女ともに若い人たちが多く、子供連れの若夫婦も多い。ここへ来
るのは一種の冒険旅行だから、老人はあまり来ていないようだ。
夕食ではとろろ芋焼酎というのがあったのでそれを飲んだ。光子と
新さんはワイン。料理は温泉定番のものが多かった。自分で野菜や山
菜を作っているという上品な和服姿の女将が自分で作ったとろろ汁を
持って挨拶に来室。珍しく馬刺しが出たし、岩魚の蒸焼きもこの辺な
らではであろう。おれは食べなかったが、光子によれば胡桃御飯とい
うのが旨かったらしい。酔ってふらふらになったままで自室に戻るの
は難行苦行であった。囲炉裏の部屋に四人集まってまた酒盛りとなる。
酔ってもいないのに喜美子さんが喋りまくり、とうとう十二時近くま
で話し込んでしまって、その間もビールや酒を飲み続けたため、すっ
かり酔ってしまう。新さんもよく飲んで酔い、珍しくおれの煙草を数
本服んだりもした。
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