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偽文士日碌

十一月十一日(金):999-1000

 トランプ勝利がツイッターで大騒ぎ。おれの小説みたいだと言うの
だ。面白がって泡沫候補になったものの、本当に大統領になっては大
変だというので、皆から嫌われそうな暴言を吐き続けているうち、こ
れが評判になって人気急上昇。本当に大統領になってしまい、本人は
困惑するというものである。まあ、それだけでは小説にならんが。
 四、五日前から気管支炎になって困っている。コンタック600を
服んでもなおらない。あいにく人と会う約束をたくさんしているので
恐慌だ。「群像」に短文を書く約束をしていたらしいが、締切が今日
だという。とてもできそうにない。
 午後五時、アンドリュー・ドライバーが来宅。六年ぶりか。瀟洒に
老けていて面白い。土産物のマローングラッセと、麦焼酎「百年の孤
独」を貰う。新しい「短篇集」と、ほぼ同時に出る日本作家のアンソ
ロジーについていろいろと相談する。六時、光子も加えて三人でリス
トランテ・フィオーレへ行く。おれは飲めない。光子とアンドリュー
がいい気分になり、話が弾んでいるのを見ているだけで、はなはだ残
念である。料理はいずれもオーナーシェフの手になるもので最高の美
味であった。この前は彼がいなかったのだ。食事の後、いったん我が
家まで戻り、光子が用意した何やかやの土産物を渡す。アンドリュー
(これからはそう呼べと言うのだ)は地下鉄に乗ると言い、元気に帰
って行った。深夜、またしても咳と痰に悩む。
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