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偽文士日碌

一月二十六日(木):1013-1014

 十二時前に伸輔が来て、一時前に家族三人がタクシーで出発。今日
は椿山荘で毎日芸術賞の贈賞式がある。控室では現代美術の河口龍夫
と同じテーブル。伸輔を紹介する。河口さんはミズマアートギャラリ
ーをご存知だった。河口夫人はわが愛読者でもある。河口さんが多摩
美大、伸輔が武蔵野美大、その上お互い家族ぐるみで神戸出身だと聞
き、盛りあがる。松浦寿輝にも逢った。わが作品を推してくれた礼を
述べる。松浦氏はこの日、早く帰ってしまったが、どうせもうすぐ対
談がある。対談で話すべきことを全部喋りそうだったので、かえって
安心した。
 贈賞式会場に案内される。賞状や賞金や記念品を受け取ったあと、
まず堤剛のチェロによるバッハ無伴奏曲の演奏のあと、石井ふく子、
河口龍夫、黒沢清、おれ、藤井ごうの順で挨拶。坂本冬美は公演で欠
席。わが挨拶のほぼ全文を記しておく。
「毎日芸術賞。芸術というものとは無関係だと思っていたんです。文
学雑誌に書いてはいますが、自分は基本エンタメなので。今度受賞し
た本、『モナドの領域』って言うんですが、小難しいところをすっ飛
ばして読めばエンタメです。オビでは『わが最後の長篇で最高傑作』
などと自分で書いていますが、これは半分本心です。これについては
あちこちに書いていますので割愛しますが、あとの半分は売れてほし
かったからです。こう書けば売れるだろうという意図でしたが、発売
されて今で一年ちょっとになりますが、あまり評判にもならず、評価
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