偽文士日碌

上げていた。文学賞だと必ず長時間喋りまくるのがひとりかふたりは
必ずいるのだが、今日の人たちは本当の意味のインテリだったのだろ
う。池澤夏樹がお嬢さんの池澤春菜を紹介してくれた。藤井ごうが親
戚なのだという。春菜さんはＳＦの評論家でもある。光子も伸輔も、
のべつ誰かと夢中で話していたようである。
　協賛の信越化学工業という会社から記念品を戴いていて、中味が何
だかわからなかったので、さっき壇上で挨拶した会長が、一緒に写真
を撮りたいと言ってきたのを機に、あれは何ですかと聞いたら、会長
のくせに中味を知らなかった。あとで聞くと純金一オンスのイーグル
金貨だった。
　お開きになる寸前にまた喫煙所へ行ったが、鵜飼哲夫、矢野優、楠
瀬啓之などと椅子に掛けて話が盛りあがるうち、冷凍庫にいるような
気分になり、あわてて椿山荘を出る。皆が親切に送ってくれたが、寒
い中、なかなか来ないタクシーをえんえんと待たされている間、内藤
さんがずっとついていてくれたのは嬉しかった。
　夕食が何もないので、伸輔が青山通りと表参道の交差点で降り、紀
ノ国屋へ買い物に。おれたち夫婦は一足先に帰宅。テレビをつけると
さっきまでパーティで話していた中瀬ゆかりがさっきの衣装のままナ
マ本番で喋っている。凄い人だなあと感服しきり。伸輔はおれの好み
のものばかりをうまく買ってきてくれた。おれは焼酎で伸輔はビール
で光子はワインと、例によって三人とも酒が違う。伸輔は七時半だか
八時だかに帰って行った。